1999年 ベスト 映画

 

 

『第4回 アート・ドキュメンタリ映画祭in大阪』 1999年2月27日〜3月7日 キリンプラザ大阪
 短いのから長いのまで何10作とあるけど、A〜Qに分類して上映されていました。目玉はなんと言っても、←のチラシにもなったプログラムA『ルー・リード: ロックンロール・ハート』 ね。左がルー・リード、右が売り出してくれたゲイの芸術家アンディ・ウオーホル。

←チラシをスキャナしたったで。

                         

プログラムA『ルー・リード ロックンロール・ハート』 1998年作 監督ティモシー・グリーンフィールド=サンダース

 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドってバンドを結成し、ゲイの芸術家アンディ・ウオーホルに見出され、大々的に売り出してもらったけど、全然売れず失意のまま崩壊し(後に再評価された)、ソロになってから大成功をおさめ、ずっと第一線で活躍を続け、長い芸暦を誇るミュージシャン、ルー・リードのこれまでを振り返るドキュメンタリー。
 あくまでもルー・リード賛美。最後、ローリー・アンダーソンって女性アーティストと仲いいと見せて。彼の作品を知るために重要な彼の私生活での傷(ゲイとしての痛み、女との短期間で終わった不幸な結婚・離婚、女装男性レイチェルとの恋愛と別れ、又もやシルヴィアって女と結婚して普通の人宣言してゲイの過去を捨てたり・で離婚)には、あえて触れてはいませんでしたね。あまりにも不自然なぐらい。

 

 

『ライフ・イズ・ビューティフル』 監督:ロベルト・ベニーニ   ロベルト・ベニーニってクサイ芸風で鼻について避けてたけど、私ナチス・ドイツものゆうたらとにかく好きやから(←あまりおおっぴらに言うたらアカンねんけど)、一応チェック。彼のドロクササ、クドサが逆に第二次世界大戦時のイタリアを舞台にしたら、はまってましたわ。町並みから美術から出演俳優までチャント昔のにおいがして。『シンドラーのリスト』なんか昔のにおいせえへんがな(←「お前、あの頃生きてたんかい!」ってツッコまれても困るけど・・・)。
 ただ、私は個人的には、ずっと前深夜にTV放映された超シリアスな『裸で狼の群れのなかに』(1963年東ドイツ フランク・バイヤー監督 ブルーノ・アービッツ脚本 白黒)のほうが好み。戦後すぐに撮られたので緊張感が強烈! ドイツのマイナーなのやからヴィデオ化されていないのね。ナチス政権は収容所にユダヤ人全員を強制収容し、その中でも働き盛りのんだけ生かして、子どもは全部始末したけど、ユダヤ人たちがトランクのケイスに隠した一人の小さな子どもを、地獄の収容所内でどうやって生き延びさせるかって内容なのね。これ観たから、『ライフ・イズ・ビューティフル』は甘いな〜と思うとこあるけどね。
 ただ、くさくてくどくてもう結構ってなロビン・ウイリアムズ主演版でアメリカで作られたやつは、観に行く気もなし!

 

 

          

「ロシア映画秘宝展 「幻想&SF」特集」 (6月19日〜7月2日) 地下鉄、九条駅の近くのシネ・ヌーヴォ
 これは、企画者の誠意が感じられた。今のハリウッド映画は変に特撮が売りの、遊園地のアトラクション感覚やし、日本映画もTV化していってるでしょ。昔のロシア映画だと、泥臭く素朴でも神秘的なのを表現しているかなと期待して見に行きました。すごいよかったですよ。

 
              
  ↑チラシ 
メインの写真は『妖婆・死棺の呪い』から
↑パンフレット
 写真は『スタフ王の野蛮な狩り』から
 
                              
『妖婆・死棺の呪い』 1967年
原作:ニコライ・ゴーゴリ 
脚本;アレクサンドル・プトゥシコ、コンスタンチン・エルショフ、ゲオルギー・クロバチョフ 
総監督:アレクサンドル・プトゥシコ 
監督コンスタンチン・エルショフ、ゲオルギー・クロバチョフ
 これはずっと前に別のとこで観たからパスしたけど、すごいよかったよ。
『火を噴く惑星』 1962年
監督:バーベル・クルシャンツェフ
脚本・アレクサンドル・カザンツェフ、バーベル・クルシャンツェフ
 昔の手塚治虫の漫画を思い出させる、幼稚でなつかしいSFがいとおしい。ごついロボットがヨタヨタと乗組員を救助したり。なつかし〜。
『スタフ王の野蛮な狩り』 1979年
監督:ワレーリー・ルビンチク
脚本:ウラジミール・コロトケヴィッチ、ワレーリー・ルビンチク
 これがすごい拾い物。傑作。もはや、MTVか遊園地のアトラクションか、みたいなハリウッド映画界でも、日本映画界でも撮られないでしょうね。神秘と幻想と怪奇に満ちている。前近代の、ど田舎が舞台で、さびれた古城にお姫様や年老いた貴婦人が住んでいて、先祖のたたりに怯えて狂っていっている。そこへ都会から学生が来て謎を解明していって・・・って展開がいかにもでしょ。前近代のロシアの土俗を、叙情性豊かに描いたのがいい。
『ピルクスの審問』 1979年
原作:スタニスワス・レム(1921〜)
監督:マレク・ペストラク 
 原作がアンドレイ・タルコフスキー監督の1972年の『惑星ソラリス』の原作者スタニスワス・レムでもあって、期待して観たけど、期待のほうが大き過ぎたみたい。
 宇宙船の船長が、乗組員5人のうち誰が人間と見分けがつかないほどの精巧なサイボーグなのかを見分けようかと言う話。
 SF小説で「人間とは?」という哲学的命題を題材にした純文学的な作品がインテリたちから評価されたりするけど、フィリップ・K・ディック(1928〜82)の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』はハリウッドで1982年に『ブレイドランナー』って金をかけたタルイ娯楽映画にされたけど、これも娯楽ものとしては『ブレイドランナー』よりもさらにタルイし、登場人物に華がないし、おまけに低予算やし、かといって『惑星ソラリス』ほどの芸術性もないし。
『エバンス博士の沈黙』 1973年
脚本・監督:ブジミール・メタリニコフ
 世界平和のための活動をする地球最高の科学者(妻のいる老人)が、宇宙からの平和のメッセイジを地球に伝えにきた宇宙人の若い美女との交流して・・・って内容で、製作者達がマジメな主張を伝える志をもって撮ったんやろうけど・・・なにもかもやぼったいんや〜。宇宙からの使者が、ただ単に髪を青く染めただけのイモねえちゃんやし。
『死者からの手紙』 1986年 
監督:コンスタンチン・ロブシャンスキー 
脚本:ニコライ・ポコプツェフ
  核戦争後の地球。地上が核に汚染され、地下に逃げた方々の描写があまりにもリアルすぎてつらい、暗〜く深刻な話し。ああ、つらい。まあ、その迫真の描写を評価する方がいるのは分かりますけどね(パンフレットで【やはり同じテーマでアメリカで製作された「ザ・デイ・アフター」を遥かに超える作品として、世界的に高い評価を受けた】ってあったのは、ハッタリではない)。
『アエリータ』 1924年 
原作:アレクセイ・トルストイ
監督:ヤーコフ・プロタザーノフ 
脚本:A・トルストイ、F・オツェプ、A・ファイコ
  サイレントで、その当時やったら、生の演奏家たちが演奏していたのやろうけど、それもなし。内容じたいは今観たらたわいないけど、地球人と恋愛関係になる宇宙の女王アエリータのファッションとかが、当時としては「ロシアン・アヴァンギャルドで素敵」やったんやろうな。
『ミスター・デザイナー』 1988年
監督:オレーグ・テプツォフ
脚本:ユーリー・アラポフ                    
主役がデザイナーで、かつて自分のモデルだった絶世の美女が実はお人形で、最後殺し合い。ロシアらしい古風な味わいがあったとこはよかったけど、でもなんかやぼったいの。

 

 

 1999年に映画館まで足を運んだのは以上。ほとんど、ヴィデオ化されていないのばっかりで、私がいくら絶賛したのでも、読者にはチェックできないかもね。「イヤミったらしい」なんて怒らないでくださいね。

 

 観に行きたかったけど、行けなかった映画

 ↑上の『アート・ドキュメンタリ映画祭in大阪』でもらったチラシで知った『北欧映画祭in大阪』3月8日〜14日 キリンプラザ大阪 行きたかったなあ。特に『ハムスン』『バード・ストリート』『ポートランド』『ハンター』 できたら全部。
 ヴィデオ化されへんのんやろううなあ・・。もし例えヴィデオ化されても、ハリウッド・メジャーのんに押されて、レンタル・ヴィデオ屋には絶対ならべられないんやろうなあ〜@

11月にフランスの画家ロートレックの生涯(上流階級のお坊ちゃまで、身体障害者で、下層階級の芸能を題材に絵を書き、死後評価された)を題材にしたフランス映画が上映されたけど、都合がつかず観にいけなかったの。残念。ヴィデオ化してほしい。ずっと前TVで『赤い風車』ってハリウッドが映画化した古い古い映画を観て感動したので、本場フランス作のと見比べてみたかったんだい。
 レンタル・ヴィデオ屋さ〜ん、頼むよ〜。ハリウッド・メジャーのんばっかりならべんと。