反ピル本に対する医学者による批評、及び著者による反論
The
Medical Journal of Australia → Against
the pill 和訳 訳者・のら猫の手 ピルに反対して ジョン・ウィルクス(John Wilks)著『ピル及びその他の薬剤に関する消費者ガイド (A consumer's guide to the pill and other drugs)』 この本を批評するのは、証拠に基づいた医学という現代の風潮において、大変困難なことです。 というのも、この本の素材の多くは情緒的で、又、参照の多くは女性や科学者への取材の新聞記事です。 避妊の方法上のデータの多くは正確に引用されます。 しかし、否定的なことは、利点とリスクとを公平に比較することなしに、強調されます。 例えば、著者は、第3世代のプロゲストーゲン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)混合型経口避妊薬ピルの利用者には血栓塞栓症の発生率が上昇する可能性に関するデータなら提供しますが、例の第3世代の混合型ピルが心筋梗塞の危険を縮小するということには触れてはいません。 乳癌と経口避妊薬使用との関連について、
Wilksは「乳癌と経口避妊薬使用との関連について、
Wilksは「若年女性のピル服用は、乳癌の危険をより大きくする(腫物の増大、予後の悪化)」と結論を下します。
これは1996年『ランセット(Lancet)』で公表された研究(現在までで最も決定的なものと見なされています)
(1)に真っ向から反抗します。
その一方で、より小さくそれほど決定的ではない研究からは正確に引用しています。
その『ランセット』1996年の研究は、
乳癌のある5万3, 297人のピル服用女性と、乳癌のない10万239人以上の女性との結果を比較する、
54の他の研究からのデータを再分析しました。 同様に、WilksはVan der Vangeの混合型低用量経口避妊薬ピル服用女性に関する調査から引用します
(2)。 数多くの不完全なコンドームの回収に基づいて、 彼はさらに「コンドームにはあらかじめどうしても穴ができるもので、 穴なしのコンドームなんてものを作るのは不可能です」 と主張し、品質管理が貧弱であることを示唆します。 不完全なコンドームが探索され回収されることを保証し、その回収を品質管理と同等だと解釈する方もいます。実際は、 コンドーム製造のための基準は非常に高くあります。 著者は、服用者に避妊と排卵誘発剤に関する本当の事実を供給し、 製薬会社と保健専門家によって示された「不完全な」データを打ち消すことを目指しています。 しかしながら、この本には偏見に満ちた情報があるので、私はこの本を推奨しません。 Edith Weisberg(イーディス・ワイスバーグ) |
1. | Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Breast cancer and hormonal contraceptives. Lancet 1996; 347: 1713-1727. |
2. | Van der Vange N. Ovarian activity in low dose oral contraceptives. In: Chamberlain G (editor). Contemporary obstetrics and gynaecology. London: Butterworths 1988, 317-326. |
著者の返答 編集者御中 私は、貴誌が、私の著書『ピル及びその他の薬剤に関する消費者ガイド (A consumer's guide to the pill and other drugs)』に対する書評(1)を運んでくれたことを感謝します。 しかしながら、私の見たところ、 ワイスバーグは、事実に関して5つの間違いをしました。それらを私は証明可能です。 まず最初に、私のテキストが証拠に基づかないという彼女の主張ですが、
ワイスバーグは「参照の多くは女性や科学者への取材の新聞記事です」と書きました。 残りの328の出所(合計の87.5%)は、ランセット(50の記事)、JAMA(11)、 『New England Journal of Medicine』(14)、 『British Medical Journal』(14)、 『American Journal of Epidemiology』及びその他の疫学に関する雑誌(14)、 『American Journal of Obstetrics and Gynecology』及びその他の婦人科学に関する雑誌(23)、 『British Journal of Cancer』及びその他の癌に関する雑誌(25)です。 残りは、他にも評判の高い主要な資料(例、『British Journal of Haematology』)からです。 第二に、ワイスバーグは、 私が第3世代ピルに関して「心筋梗塞の危険を縮小する」可能性について言及しないと述べました。 確かにそうしないかったが、 私はルイス及びその他(2)による研究に言及しました。 それを要約すると 「それらの結果が示すのは... 第3世代ピルは第2世代ピルに比べて女性の心筋梗塞の危険をわずかばかり減少させました」。 第3に、哀れな患者の受諾が「子宮頚部の粘液の粘性に対するプロゲストゲンの影響を減少させる」 という私の主張に対して、 ワイスバーグは、「科学的な基礎」を提示しないと述べました。 再び、そんなことはありませんと主張させていただきます。 POPのいい加減さに関する2つの参照が提示されていて、 その1つがSparrow(3)からで、 後1つがWeisberg(4)からです。 第4に、 突破口となる排卵を子宮内膜が受け入れてくれないことにより流産を促す行為に結びつく可能性がある仮説を提案する際に、 私は2つの記事について議論しました。 Weisbergは私がただ1つしか引用していなかったと指摘しましたが、 2つあり、その2番目のはGrimes及びその他によるものです(5)。 第5に、ワイスバーグは、 私が「若年女性のピル服用は、乳癌の危険をより大きくする(腫物の増大、予後の悪化)」 と結論づけていると指摘しました。 これは正しくありません。 これらの結論はOlsson及びその他 (6)、Ranstam及びその他(7)、Olsson及びその他(8)によってなされました。 それらは「より大きな胸の腫物」、「悪化する予後」および「悪化する生き残り」という句を使用しました。 私はこれらの研究から引用しました。 ワイスバーグは前述の誤読を根拠にして、私が例の Collaborative Group の研究を省略をしたことについて膨大に批判しました (9)。 さらに繰り返して言いますが、私はそれを引用した上で、 乳癌の危険が24%増加したという主要な調査結果について議論しました。 とは言っても、私は、若い女性も年をとった女性も、 異なる危険の経歴をもつグループを「共同利用のためにたくわえた」 という点のある研究に対して、批判をするために引用したのでしたが。 最後に、応用数学、医学倫理および薬物学/毒物学、産科医/婦人科医、 コンサルタント内科医/健診腫瘍学者の教授たち および5人のGP(訳注・一般医。専門医に対して、全科診療の医師・獣医。略GP)が、 私の著書が出版される前に批評したとういことを記して、この文章を締めくくりたいと思います。 John Wilks Author, Assistant Editor, Micromedex International Editorial Board Shop 1, 36 Johnson Avenue, Seven Hills, NSW 2147 |
1. | Weisberg E. Against the pill [book review]. Med J Aust 1999; 171: 209. |
2. | Lewis MA, Spitzer WO, Heinemann LA, et al. Third generation oral contraceptives and risk of myocardial infarction: an international case-control study. Transnational Research Group on Oral Contraceptives and the Health of Young Women. BMJ 1996; 312: 88-90. |
3. | Sparrow MJ. Pregnancies in reliable pill takers. N Z Med J 1989; 102: 575-577. |
4. | Weisberg E. Oral contraceptives: fine tuning clinical use. Patient Management 1988; July: 19-35. |
5. | Grimes DA, Godwin AJ, Rubin A, et al. Ovulation and follicular development associated with the low-dose oral contraceptives: a randomized controlled trial. Obstet Gynecol 1994; 83: 29-34. |
6. | Olsson H, et al. Early oral contraceptive use and breast cancer in Southern Sweden. Proc Annu Meet Am Soc Clin Oncol 1989; 8: A367 |
7. | Ranstam J, Olsson H, Garne JP, et al. Survival in breast cancer and age at start of oral contraceptive usage. Anticancer Res 1991; 11: 2043-2046. |
8. | Olsson H, Ranstam J, Baldetorp B, et al. Proliferation and DNA ploidy in malignant breast tumors in relation to early oral contraceptive use and early abortions. Cancer 1991; 67: 1285-1290. |
9. | Breast cancer and hormonal contraceptives: collaborative reanalysis of individual data on 53 297 women with breast cancer and 100 239 women without breast cancer from 54 epidemiological studies. Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Lancet 1996; 347: 1713-1727. |
© 1999 Medical Journal of Australia
訳注