井上はねこへの批判

 

以下、井上はねこ様に捧げます

 

 

  『蔵』 → 『ピル解禁は自立への道?』長い間すったもんだしていたが、低用量ピルが来年前半にも解禁されるようだ。
 一旦は解禁が決まりかけたが、性交による「エイズ」感染者が増加していたために見送られた、といういきさつがある。コンドームを使用すれば、避妊に加え、性感染症の予防にも効果があるからだ。

正確な数字はいま手元にはないが、新聞(10.29.神戸新聞)によれば、すでに日本でも約20万人の女性が、避妊のためにピルを服用しているという。現在は低用量ピルを入手できないので、「治療」を名目に、産婦人科で高用量のピルを処方してもらっているわけだ。

ピルとは知らずにこの薬を飲んだことのある女性も多いだろう。たとえば修学旅行の日程と月経とがかち合う可能性のある女生徒が、旅行の1、2カ月前から「月経をずらすために」飲むのが、この高用量ピルだ。すでに小学6年のとき、旅行前にこの薬を飲んでいる同級生がいた。私も中学の修学旅行と月経がみごとにバッティングしそうだったが、身体の自然なリズムを変えるのがいやで服用せず、結局、3泊4日の旅行中、お風呂に入れたのは1日だけだったという思い出がある。

数多い女性が避妊のためにピルを服用しているという既成事実と、高用量ゆえの副作用の危険性を考えれば、低用量ピルの解禁はいたしかたないかもしれない。が、ピル解禁を報道した新聞を読んでいるうちに、むくむくと疑問が頭をもたげてきた。避妊のあり方、つまりセックスの際の男女の関わりを考える記事が、まるで見当たらなかったからだ。

 「ピル解禁」のニュースでは、「副作用の発生や性感染症の推移(要するに、コンドームなしで性交相手に病気を移したり、逆に移されたりするという意味ね)」をいかに防ぐか、という点ばかりに焦点が当たっていて、「女性がピルを服用する意味」についてはまるで考えられていないのだ。

 今回は、そこをじっくり考えてみることにする。

 私は、たとえ低用量ピルが解禁されたとしても、女性がピルを服用することには賛成できない。理由はいくつかある。

 まず何よりも、ピルの作用のしくみが気に入らない(笑)。
 妊娠すると、ホルモン分泌が変わる。ホルモンの変化によって卵巣は、「あ、妊娠したな」と判断し、排卵をやめる。ピルは、妊娠後に分泌されるホルモンと同じ成分を合成したホルモン剤であり、これを飲むと身体が「妊娠した」と判断し、排卵を止める。その結果、男性が避妊に気を使わずに性交しても、妊娠することはなくなるわけだ。
 避妊率は100%に近いが、そのために女性は毎日毎日ピルを服用しなければならない。仮に1日でも忘れてしまえば妊娠の可能性がでてくるからだ。
 20日余、来る日も来る日もピルを飲む。飲用をやめると月経が始まるが、そこには卵子は含まれていない。無排卵性月経というわけだ。
 そしてまた、次の服用サイクルが始まる・・・。

  いったい何が悲しゅうて、自分の身体に嘘をつく薬を飲み続けなあかんの? というのが、ピルに批判的な1番目の理由だ。

 2つ目の反対理由=ただでさえ乏しい性交相手とのコミュニケーションが、ピル解禁によって一層貧しくなる恐れがあるからだ。
 現在の日本で、望まない妊娠をして中絶するのはどういう女性か、正確な情報をつかんでいる人はどれくらいいるだろう。

 中絶者のうちもっとも数の多い層は、「子どものいる既婚女性」である。

 悲しい話だ。夫との間の性行為で、避妊についてきちんと話し合うこともできずに妊娠してしまい、「もう産めない(産みたくない)」と中絶するのだから。

 日本ほど、巷に性情報の氾濫している国は世界中のどこにもないと思われるが、その内容はいわゆる「フーゾク」、つまりは買売春とそのバリエーション情報ばかりで、性について当たり前に考える「場」はほとんどない。

 若い世代を対象にした雑誌には性や避妊の記事がしょっちゅう掲載されているが、そこでもまだ、「彼とエッチするときに、コンドームをつけてなんて言うのは恥ずかしいし、慣れてるように思われそうでいや」という女の子の声や、「ナマでする方が感じる」「外に出したら大丈夫でしょう」といった男の子の声など、信じられないほどの無知をさらけ出すコメントが、十年一日のごとく掲載されている。
 もちろんたいていの記事には、専門医の解説と「コンドームを使いなさい」という意見が付いているのだが、読者の多くは、先に書いたような読者コメントを読んで、「みんなおんなじだ〜」と安心している節がある。

 それ以上に問題なのは、雑誌の情報には頼っても、肝心の性行為の相手と、性や避妊について事前に話し合わないことだろう。そのような「コミュニケーション不全状態」が結婚後も引き続いていて、望まぬ妊娠をした妻が夫に「またできたんか!」と怒られるという珍現象まで起きるわけだ。

 ったく! 私がその場にいれば、「避妊もせずに射精したのはお前だろう!!」と男を張り倒し、「こんなバカ男とは別れなさい!」と妻を説得してしまうことだろうが。

 ピル解禁に賛成する声の中に、「女性が自主的にできる避妊方法だから、女性の自立につながる」という意見がある。
 それは間違っていると、私は考える。
 性をめぐる「自立」とは、自分がいつ誰とどういう性関係を持つかを自分で選ぶことができ、また、子どもを持つかどうか、産むとして、誰との間の子をいつ産むかも自分で判断し、それについて性関係の相手ときちんと話し合って了解しあう関係を作れること、だ。

しかし実際の日本社会では、女性が男性と二人の性関係について話し合い、避妊の方法についても話し合った上でコトに及ぶという「あたりまえ」が当たり前として通用しない。勘違いの「エロス男」たちは、「セックスとはそんなものじゃない」とうそぶき、妻を性欲の処理装置としかみない夫は、めんどうなことはすべて妻に背負わせて、無責任なセックスをする。

 うちは違う! と言う読者は多いだろうが(そうでなきゃ困るが)、既婚女性の中絶率が最も高いという統計はやはり、日本の貧しい男女関係を象徴しているのだ。

こんな社会で低容量ピルが解禁されたらどうなるか。夫や恋人や行きずりの男に「コンドームつけて!」と言えない女たちが、ひそかにせっせとピルを飲んで自衛する…この姿のどこに、女の自立を感じ取れるだろう。

 ピルを捨てて男にしっかり向かおうよ、女性諸君!
 そういう会話に「ロマンを感じ取れない」「鈍感男」や、わがままで子どもっぽいだけの男はもてないのだ、という風潮を、ぜひとも作り上げていこうよ。

 解禁はまだ先だけど、そう布教(笑)して回りたい心境だ。

 

 

 井上はねこ様へ

 それって違うんじゃない?


 男女平等ではないからって、女性のための避妊が解禁されないのは本末転倒です。

 外国のあるフェミニストが「男女格差がある社会では、男女間の対等な関係はありえない」「あらゆる男女間のセックスは強姦だ」と主張しているのがいるけど。私はこれはいくなんでも極端過ぎて賛同できません。世間一般からの支持はえられないでしょうね。「気狂いフェミニスト」って嘲笑をあびるでしょう。ただ、これはこれで首尾一貫していて筋が通っていることは通っている。実際、男性との性行為を一切拒否する禁欲主義のフェミニスト集団がいます。女性たちだけで共同生活をおくり、できる限り男性との接触をたつのもいます。私はこんな考え、全く同意できませんが。でもそういう主張のほうが、一貫性があることはある。ご自身の信念で尼僧みたいに禁欲なさろうと、どうぞご自由に。

 日本では、田嶋陽子が「恋愛賛美で女は洗脳され、男の奴隷にされる」「結婚は、女を男の奴隷にする」って趣旨のことを発言していた。この発言は、日本では中々受け入れられないだろうけど、ある意味分かる。それに一貫性があることはあるしね。
 日本のフェミニストって、中途半端なの多いのよ。変なとこでダブルスタンダードを使い分けるの。特に結婚しているフェミニストって、物言いがうさんくさいの。

 さらに極端なこと言うけど、もし「男女格差があるから、あらゆる男女の性行為、恋愛、結婚、売買春を法律で禁止し、違反者は警察が逮捕する」って主張するフェミニストがでてきても(私はそんなの聞いたことないけど)、一貫性はあることはある(しつこく繰り返すけど、私はそんな考えには絶対反対ですよ)。それに比べて、井上様は、ピルの解禁の否定だけを主張する。なぜ「ピルだけ」禁止するのか? 

 井上はねこを含め、日本のフェミニストは、そこまで言いきれるのか?  妙に中途半端なのね。男女格差のある社会では、恋愛もセックスも結婚も対等ではない。あらゆる男女間のセックスも恋愛も結婚も、全面否定し、禁止する考えか?

 又、同性同士で、家柄、学歴などあらゆる部分で同等の者同士ならセックスしてもいいけど、少しでも格差が感じられるのならセックスは禁止するのか?

「Domestic Violence」(「夫婦・恋人間暴力」と言うのが適切と思うけどね)が今問題として取り上げられるようになってますよね。
 世の中には、夫婦・恋人間暴力があって、暴力ふるうのが男から女へというのが圧倒的に多いのは男女格差を表しているし問題です。
 これへの対応策は、暴力者を罰し、被害者の逃亡を援助するのが一番では? 女性が男性からすぐ別れられるように自立援助をすることでは? だいたい女がいったん専業主婦なったりしたら、夫が浮気しようが暴力ふるおうが出て行けないから耐え忍んでいるのが多いのでしょ。実際アメリカでは、夫に暴力をふるわれた女性が駆け込める施設がほんのごく少しだったのが、今じゃものすごい数の施設があるとか。日本ではまだまだそういう施設がないし、そういう保護施設があればいいと思うし、離婚して自活できるようになればいいと思っています。今の日本では、夫から逃げたい女性は、風俗に面接行って即仕事、即何万円で住む部屋与えられてっていうのがまだまだ多いのかな? 
 まさか、井上様は「夫婦・恋人間暴力」で女性の被害者が多いからって、「恋愛、セックス、結婚を禁止する」なんて主張じゃないですよね。これは世間一般からの支持はまず得られないでしょうね。
 逆に、井上様の「ピル解禁反対」っていうのは、世間の支持を得やすい主張なんですよ。だからついそういうのを主張してしまうのでしょうけど。性的保守派も、ホクホク大喜びでしょうね。実際、とある男性が、世間一般相手にするときは「女性の人権保護のため」とかなんとかぬかしているけど、カトリック教徒の機関紙では「人工避妊反対」って訴えていた。まあ、ほんとうの信仰じゃなく、そいつの本音は性的保守反動なのだと私は解釈していますけどね。
 まだまだ男性に優位な社会で、女性は恨みつらみをためていると思います。その恨みつらみを解消しようという主張や行動じたいは私も賛成ですが。井上様といい、他の男性たちも、女のルサンチマンを、変な方向に誘導しているなあ。そうじゃなく、もっといい方向に進んでください。