『週刊金曜日』(1999年7月16日号) 草田央「医療消費者は「薬害」への警戒怠るな」 ←批判

医療消費者は「薬害」への警戒怠るな

東京都杉並区 草田央

薬害エイズを追及する市民ネットワーク(36歳)

 いま世界では、ピル見直しの気運が高まりつつある。 1980年代にはエイズが登場した。 より副作用が少ないとして90年代に登場した第3世代ピルでは、逆に死亡例が多発している。 製造物責任法による訴訟にさらされることになった製薬企業は、 もはやピルの開発意欲を失いつつあるとも言われる。

そうしたなか、一部とはいえ日本の女性たちの解禁を求める声を背景に、遅まきながらの認可となった。 性行為感染症の危険も、副作用のリスクも、自己責任という名のもとに、すべて女性のみが負わされることになるのだろうか。

「あなたたちが望んだことでしょ!?」と。

男性中心の社会参加のため、望まない妊娠を避けるため、治療薬ではないピルに利便性を求める気持ちは理解できる。 しかし、無批判に利便性のみを追求していたのでは、 大きな代償を払わせられることになるのも避けられないかもしれない。

性行為感染は確実に増えるだろうし、副作用は必ずある。 死亡者も出るに違いない(ピルとの因果関係が明らかにされるとは限らないが)。 そうした被害を低く抑え、生じてしまった被害をいかに迅速に救済していくかが、これからの課題だ。

特に「安全・推奨キャンペーン」には、注意が必要だ。 被害を受けたとき、だまされたと感じるかどうかが、薬害となるかどうかのポイントだと考えられる。

ピル製薬会社にとって「未開拓の地」である「ドル箱ニッポン」へ、海外からピルがどっと押し寄せてくるのである。 新たな医療消費者となった女性たちは、警戒の目を光らせ続けなければならない。 厚生省まかせ医者まかせで警戒を怠ったところに「薬害」は確実に忍び寄る。 警戒への努力をし続けなければならないことが、利便性を手に入れた私たちの最低限の代償なのである。