『週間金曜日』(1999年7月16日号) 森冬実「ピルは法による縛りを」 ピルは法による縛りを 東京都中野区 森冬実 準備出産&からだのおしゃべり会(52歳) 日本では、治療用として承認された製剤を法的に曖昧にしたまま避妊用に処方してきた。 26年間にわたる中用量ピルの「目的外」処方は、非常にずさんだった。 ピル推進派の主張は、こうした日本のピルに関する歴史認識を欠いている。 実際に服用している20〜30万人の女たちが抱える問題を、推進派は親身になって取り上げたことがあるだろうか。 調査もせずに、「用量の多いピルを服用するため、多くの女性が副作用に苦しんでいる」と言って退け、 低用量ピルの承認に利用した。 低用量ピルについては「承認」の前から、6団体により「ガイドライン」なるものがつくられていた。 ピルは今回法規制がなされなかったので、この「ガイドライン」に沿って扱われることになるが、不妊治療がそうだったように、 「ガイドライン」は医療現場でいくらでも緩和されてしまう。 迷走する「人権派」は早くも、 「たびたびの健康検査は(服用者のコストが)年10万円以上もかかるし、処方基準から見て過剰診療だ」と言い出した。 女たちには利用しやすく、医師にはピルが高収入をもたらす図式になる。 「女の自己責任」という列車は「副作用」経由「冥土」行きなのだろうか。 厚生省は銅付IUD(子宮内避妊リング)も同時に承認した。 母子保健課がこれを受けて母体保護法の改訂作業に入ることになる。 私たちはこれについても黙って見過ごすわけにはいかない。 総則に「避妊」の目的条項を盛り込み、縛りをかけるよう要求する。 またピルと銅付IUDにからめて、女の健康と生命を守る母体保護法本来の趣旨に沿った積極的な「改訂案」を提出したい。 すでに案は手許にある。 |