佐藤禮子(れいこ) 短大講師

止めよう!ダイオキシン汚染 関東ネットワーク 代表
エコロジーと女性ネット

 

『消費者リポート』(第1074号)1999年3月27日

「経口避妊薬「ピル解禁」熟慮のススメ」 

佐藤禮子(れいこ) 短大講師

 

 女性がピルを飲み続けるという行為は、常に自分の身体を妊娠の状態に置きながら、「もう妊娠はしないから、性交はいつでも大丈夫」ということなのです。

セックスへの嫌悪、女性のセックスへの被害者意識。まず、それがあって、だからピル反対のための反対をヒステリックにわめきたてています。

ホルモンの影響は生涯にわたる

 先日、「エコロジーと女性」ネットは「DES(流産防止剤)の悲劇に学ぶ」という学習会で、元横浜市立大学学長高杉暹先生から、体内へのホルモン投与は、極少量でも胎児や乳児の一時期に受けた影響は不可逆であり、それは生涯にわたるということを学びました。そして、アメリカでDESを服用した500万人の子ども達が成人した今、様々の生殖障害が判明し、悲しい、辛い思いを訴えているビデオを見て、あの涙を繰り返すような行為を人類はすべきではないと強く感じました。
 ここ数年、外因性内分泌撹乱化学物質、いわゆる環境ホルモンの人体への影響が明らかになりはじめました。
 知ればしるほど、DESの10倍もエストロゲン(女性ホルモン)作用がある「ピルの解禁」に対して憂いを強くしています。女性がピルを年間ドンブリ一杯飲むことで、生涯にわたって内なる環境「肉体)はどうなるのでしょう。
 30年以上も前から使用しているアメリカで、乳がん患者が8人に1人、化学物質過敏症が10人に1人、精子数の減少や、男児の誕生の減少など、様々な減少など、様々な減少とピルとの因果関係はないのでしょうか。服用中や、その直後の妊娠の次世代への影響や、ピルを止め、妊娠を望む時になって妊娠しないなどの情報はあまり知られていませんが、既にピルをめぐって裁判まで起きています。
 WHOをはじめ、外国では「医者は警告を怠ってはならない」という注意を促してます。
 世界各国は今こそ「時のアセス」をすべきです。

 

 

ピル使用の責任は自分で

 昨年の12月、厚生省薬事審議会は「ピルに関する中間とりまとめ」を発表、「使うことのリスクと利点の関係をどうとらえるかは、一般の人の意見になると思う」といった態度でした。
「既に避妊薬として20万人が使用しているのだから、低用量の認可はすべきだ」「選択肢を広げ、医者とのインフォームドコンセントのもと、自己決定権にまかせるべきだ」「国が認可しないのはおかしい」「バイアグラが半年で認可されたのになぜピルは?」など言われています。治療のために低用量ピルを認可することと、健康な身体に避妊目的で毎日忘れずに服用し、自然界に分解しにくい人工のエストロゲンホルモンを排尿し続ける行為とは次元が違います。

あの〜、

ピル解禁反対のために、とにかく反対しているだけでは?

 

広がらない女性の権利

 運動を通してよく見えたのは、人口問題解決の家族計画のため、耐える選択手段としてのピルを日本でも認可(させ)「開発援助」という名目で使いたいという、グローバルな南北問題と女性への抑圧が存在していたことです。ならば、日本の女性たちは選択の自己決定の教育も情報も不十分で、耐える責任を押し付けられる途上国の女性たちへもっと思いを寄せるべきです。
 産む、産まないの選択は女性解放の鍵という考えに対して、「もはや、ピルで女性の権利の選択肢を広げるという発想の時代は終わりました。」と早くからリプロダクティブ・ヘルス(生殖の健康)と環境の問題に警告を発しておられる綿貫礼子さんの発言に、私は共感を覚えます。
 内分泌撹乱物質の次世代への影響や、地球レベルの生命系への影響を、個人で把握し行動することは不可能です。国は、国民と次世代の健康と生命を守り、地球環境を守る責務もあります。そこでは予防原則が大前提です。

 ピル反対したいからって、途上国の女性をいやらしく利用するなよなっ!