『週刊金曜日』1999年7月16日号

「ピル解禁」へのもろもろの疑問 東京都豊島区 佐藤禮子

短大講師(60歳)

(1) 急転回で認可され、報道が一斉に歓迎したのは、国連人口開発特別総会の開催(6月末)に関係ないのか。

(2) 人口問題解決のための海外援助で、女たちが強制的・誘導的にピルを使わされている現実をどう考えるか。

(3) ピルを飲ませたい人、「解禁」でうれしがる人、儲かる人はだれか。

(4) 健康な人が飲む薬は有効性や副効用よりまず安全性ではないか。

(5) ピルによる死亡事故や重篤な副作用による裁判例や警告、 服用中止後の妊娠の可能性の低下などの海外情報を知っているか。

 

 

(6) 厚生省は服用者の「自己責任」をいうが、 生涯および次世代へのホルモン影響の研究がほとんどない現在、無理ではないか。

(7) 内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)が問題になっている今、 なぜ、内分泌を撹乱するピルの臨床試験をやり直させないのか。

(8) 排尿による環境影響のみでなく内なる環境(肉体)への影響を、 他の化学物質汚染との相加・相乗作用からも問題にすべきではないか。

(9) 中・高用量より低用量ピルがいいというならば、まず治療薬として申請すべきで、今回の健康な人への低用量避妊薬としての申請は大量消費が目的ではないのか。

(10) 女性の真の「生殖の健康と権利」はピルによって侵害・抑圧されないか。

(11) 「中絶よりまし」は女たちの受け身の肯定ではないか。

(12) 自己決定は十分な情報、教育なくしては不可能。現状はどうか。

(13) 現状ではコンドームの使用が減りHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染が急増しないか。

 

 

(14) 障害者の生理が管理されないか。

 ピル反対したいからって、障害者を持ち出すなよな! 私はこういう物言いが一番いや!

 一番重要なのは、障害者の意志を無視した強制はしないようにってことでいいじゃないですか!

 セックスも、中絶も、避妊手術も、ピルも、利用するかしないかは、その女性の意志を尊重し、でも意志を無視した強制はダメってことじゃないですか。

 女性が自分の意志で、自分がある人を好きになり自分からセックスしたい。セックスしたいけど、未だ妊娠はしたくないから避妊する。妊娠したけど、未だ子供を育てられないから中絶する。もう子供はいらないから、避妊手術をする。

 ただ、障害者に対して、過去に、強制的に避妊手術したち、中絶したり、強姦があったからって、一番問題なのは本人の意志を無視して強制したことでしょう。
 障害者への強制を防ぐためにということで、避妊手術、中絶、セックスを非合法にするなんてことは筋が違うでしょうが!

 障害者に対して強姦があったとしても、セックスを非合法にしていいわけではないですよね。正式な結婚をお上に届け、婚姻内だけでのセックスだけを合法化し、婚姻外のセックスを全て禁止するなんてことなったら、とんでもない話ですよね。

 昔の日本の歴史をひもとけば、他の海外の国々の歴史をひもとけば、過去だけじゃなく現代でも、本人の自己決定じゃない結婚があるでしょう。本人の意志じゃない結婚があるからって、結婚を禁止するのは筋違いでしょう。
 イヤな結婚をせずに、生きていくようにできることが一番大切です。

 一番重要なのは、自己決定が尊重されるように、選択肢の充実じゃないですか。

 

(15) 産婦人科での処方箋がないと買えないピルは、横流しされ、暴力組織に利用され、 若い女性がはまる危険はないか。

 ピル反対したいからって、色々へ理屈をこまわして。一番アホらしいのがコレ!

 避妊用低用量ピルが厚生省に認可され、女性たちが産婦人科で購入できるようになる。じゃあ、女性たちも、産婦人科で処方してもらうじゃないですか。
 それを、女性たちが、わざわざ、なぜ、暴力団から購入する? そんなわきゃないじゃないっ!

 ★ 禁止こそが、逆に暴力団の資金源になる

 かつてのアメリカでは、禁酒法というものができ、そのせいでヤクザが闇酒場で酒を売りヤクザの資金源になりました。禁止こそが、逆に暴力団がヤミで売買する資金源になるのです。
 今現在、酒の売買は合法化され、成人なら飲酒も可能なら、ヤクザが闇で酒を売買する必要もないですよね。

 産婦人科で処方箋を書いてもらって購入できるだけでも、いいことじゃないですか。 

 合法的に避妊用低用量ピルが購入できないほうが、闇での売買につながりかねないのでは? 

 女性のための性的なものを全て禁止するとどうなるか?
 そっちのほうがよっぽど、暴力団の闇資金になる危険性があるでしょうがっ!
 例えば、自慰のための道具とかありますよね、バイブレーターとか。あれらも、法的にはグレーゾーンですけど、売買されています。ああいうのを売買するためには、一応公安に届を出さないとダメとか。公安に届を出した店が、あまり大っぴらにはできないけど、売買されていることはされています。ちゃんと店で売買されているなら、店で購入していますね。暴力団に横流しされ利用され、若い女性たちがはまる危険があるか? 是非根拠を示してください。

 性的なものを禁止することこそが、暴力団の資金源になるでしょう。
 松沢呉一『売る売らないはワタシが決める』を参照しました。かつては隔離された指定地域だけで売買春を容認する公娼制度があり、暴力団の入りこむ余地はなかった。ところが、戦後、アメリカが日本を再教育し、売買春の店に前借金がいくらあっても娼婦は売春する義務はなくなりました。これで十分だったのです。ところが米兵と娼婦が街中を堂々と歩き回るようになったのです。日本は隔離された場所での管理売春の歴史が長かったので、人々の嫌悪が激しかった。その嫌悪につけこんで、売買春反対派たちは売春防止法の法案化を訴え、男性権力者たちは売る側だけを罰する売春防止法へと一致点を見出し法案化してしまいました。
 売春防止法ができてから、セックス産業に暴力団が資金源にできるようになったのです。
 松沢呉一の主張は、今現在、セックス産業は暴力団か警察権力に搾り取られている、合法化こそが暴力団からの搾取をなくす方法だとか。

 

 ★ 避妊用低用量ピルが合法化されているアメリカやヨーロッパ、中国、韓国、台湾、フィリピンなどでは、女性たちが婦人科や薬局でピルを購入せずに、わざわざピルが暴力団に横流しされ若い女性がはまっているか?

 私はそんな話、知らないな〜。是非、根拠を示してください。

 

 ★ じゃあ、避妊用低用量ピルを認可し、産婦人科での処方箋がなくても、ピルが購入できるようになればいいだけの話じゃないですか?

 実際、韓国や台湾では、薬局やスーパーで気軽にピルが購入できるって。

 さらに女性が羞恥心を超えて購入できるようにするために、自動販売機で購入できるようになるとか。ネットの通信販売で購入し、郵便局の私書箱に届けてもらえるようにするとか。

 女性たちが暴力団から購入する必要性なんて全然なし!

 

 実際、日本では過激な性描写のあるレディース・コミックが、本屋で気軽に売買できるし、レディース・コミックを暴力団から購入する必要性なんてないでしょう。
 禁止されたら、闇での売買につながり、暴力団の資金源になりかねません。

 女性向の「大人のおもちゃ」、男性性器をかたどった自慰用の道具が、一応販売されています。これをほしい女性が羞恥心を超えて購入できるようにするために、各店は色々と配慮し工夫しているとか。

 これを禁止し非合法にするほうが、闇での売買につながり、暴力団の資金源になりかねません。

 

 

 

(16) 推進派の女性たちが 「私は飲まないけど、中絶を繰り返すような人にはピルは必要なのよ」と言うのをどう考えるか。

 それのどこがいけない? 

 私はもてない女で、セックス全然・・・(クー哀しい涙)。避妊のための薬もコンドームも全然必要なし。
 それでも、セックスする女性たちが、不完全な避妊具で中絶をしてしまうなら、避妊効果の高い避妊具が認可され利用し中絶するのが減るのならいいことじゃないですか。

 自分はやらない、やりたくないことでも、他者がやることに対しては構いません。ただ、お上が規制し選択肢をせばめることがいやなのね。

★ 同性愛に対する禁止と処罰
★ 白人女性が黒人男性とセックスすることは法律で禁止
★ 不貞罪
★ 障害者を産むこと
★ 障害者がセックスをして子供を産むことへの禁止

過去に実際に禁止されてきました。

私は上記のことはしたくはありません。だからといって、お上がそんなことを規制することじたいには反対です。