『ダカーポ』(マガジンハウス)1997年9月17日号。発行人・松田典之、編集人・秋葉均。表紙に「気になる問題、このまま行ったらどうなるか」「ピル解禁」 SEX
ピル解禁でSEXはどう変わる
厚生省の審議会は6月に事実上容認の報告書をまとめたが・・・
今まで避妊といえば日本ではコンドームが一般的で海外の先進国ではピルが主流だった。しかし日本でも最近、ピルを解禁しようという動きが活発化している。まだ実現には時間がかかるだろうが、厚生省の公衆衛生審議会伝染病部会は6月に事実上容認の報告書をまとめている。
「解禁されたらみんなコンドームを着けずに生でする。その方が男も女も気持ちいいから。でも、その分病気の数も増えます。
というのは、新宿東京医院の増田豊院長。感染すればほぼ確実に死に至るエイズだけではなく、クラミジア、性器ヘルペスなど性行為で伝染する病気は数多い。
「とくにクラミジアが激増するでしょう。これはディープキスやフェラチオでも移るんだけど、生になったらもっと簡単に移ってしまう。問題なのは、男は尿道に炎症が起こってすぐ自覚症状が出るけど、女はなかなか気づかないこと。気づかなければ、どんどん広がっていきますからね」
女性の症状といえば、風邪や花粉症なみの不快感。感染者が不特定多数の男性と関係すれば、当然、病気は蔓延する。また治療が遅れれば卵管に炎症を起こして不妊症にもなりかねないという。
「5人以上の男と経験した女性の4割はクラミジアに感染していたという調査があります。ピル時代になったらどこまで増えるかのか」
作家の横森里香さんもピル解禁に異議を唱える。
「今はエイズの時代じゃないですか。この時代に解禁とはまさに流れに逆行していると思います。ピルの国だといわれているアメリカだって、大人の女の人が夜遊びするときは必ずコンドームを持っていきます。まだまだ日本では、女性からコンドームを出すのって気が引ける風潮にあるけど、むしろ、この意識を改善していくことが必要ではないでしょうか」
病気の心配に加えて、横森さんはピルが女性に与える影響についても言及する。
「ピルは、ホルモン剤によって無理やり女性の体を妊娠や生理前と似た状態にするもの。人工的に体のリズムを作りだすことにも抵抗はあるし、精神面にも決していい影響はありません」
生理前になると女性は通常よりいらいらしたり、眠くなったり、空腹感を感じたりするもの。ピル解禁になれば、不安定な精神状態の女性が街にあふれることにもなる。
「若い人や自分の体に対する意識が低い人は喜んでピルを使うでしょうが。でも、それだけいらいらした女性が増えるわけだから男の人は八つ当たりを受けて大変だと思いますよ(笑)」
八つ当たりどころか、もっと深刻な事態も招くと指摘するのは、前出の増田さん。
「ピルを飲んでいるから大丈夫と言われて生でセックスして妊娠。女性が避妊の主導権を握れるから、いくらでも男をだませる。男性の望まない妊娠も増えるでしょう」
どうやら男性にとってピル解禁は、百害あって一利なりのようだ。
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