Y | それではそろそろ伊田さん、まとめの方をお願いします。 | |
伊田 | フロアの人達も含め、ほんとに今日は色々な方たちと新しく知り合えました。 こんなふうに人と出会えて嬉しい、というのはシングル単位的な感じ方です。 僕はオーソドックスな労働運動とかにもかかわっていて、制度ももちろん変えていこうと思っています。 個人が会社でのイジメやリストラに直面する、あるいは労働条件が改悪される、といったときに既成の組合に 駆け込んでもあまりやってくれない。そこで一人でも駆け込める地域ユニオンの運動なんかにもかかわっている。 それ以外に、セクシャルハラスメントの運動をやっていくこと、あるいはやる気のある地方議員たちと一緒に行政、 政治を変えることも出来る範囲でやってきたいと思っています。そしてこういう会で考えを広めていくことも僕は運動 だととらえています。3,40年前に「制度を変えなアカン」、とオトコたちがやった運動の限界が今の日本なわけですから、 制度を変えるといっても結局は僕らひとりひとりの意識を高め、しっかりとした考えをもつことで行政なり政治家なりに 具体的な提案をしていく、そういった社会づくりが大事なんだと思う。 だから一見遠いようだけども、ひとりひとりが自分なりに本読んで考えたり、こういうゆるやかな会とかで 意見を交換し合ったりして、シングル単位的な感覚を持っていくところから始まるんだと思う。 そうした感覚がないときはたとえ100人集まっても弱いな、って気がします。今日は新しい人と知り合えました。 またこれからいろいろ運動とかで、あるいは個人的にも付き合えたらいいなとか思ってるんです。 だから僕のまとめよりも、残りの時間はまたみなさんにしゃべってもらえた方がいいなと思うんです。 思ったことなんでもいいですからお願いできますか。 | |
O | (Oの発言省略) | |
のら | 今日はここに来れてほんとによかったと思ってます。ただやはり、時間が足りなかったですね。 語り合うテーマも多すぎましたし。例えば私なんかは「シングル単位の恋愛・家族論」を読んでグッとくるものがあり、 女性の性や生きざまなんかに関心の比重が高かったのですが、 Oさんは「21世紀労働論」とか労働運動の方に強く関心がおありだった。 それをこんだけの時間の中に詰め込んじゃってまとめるのは、ホント大変だと思うんですよ。 いつか機会があれば、女性の性や、自分で選べる避妊の話、売買春はどうか、セックスワークはどうか、 などといったテーマにしぼって今日のようなイベントをひらいて頂けたらと思います。 それだけでも10時間時間かかてしまうのかなあ。今日はどうもありがとういございました。 | |
H | 先ほどの話のなかの「固有名詞」、「スピリチュアリズム」って単語にピンとくるものがありました。 二人じゃなくてもいいし、三人以上、あるいは相手が人間じゃない場合もあるかもしれない、 だから結婚制度にのっかる必然性はないけど、そうしたある特定の存在と長い時間すごすってとこには大事なものがある、 というふうに思ったんですけど。 | |
伊田 | 大事というか、その時の質をどうつくるかに関心があるわけやね。 みんなが誰かとぴたーっと近づかなアカンというよりは、やっぱりひとりやでと。孤独もあるでと。 だからこそ人とふれあって嬉しいという気持ちあるよな、ってことです。 そのときのふれあって嬉しい気持ちを制度とかでつくるんでなくて、どんなふうにつくるかに関心がある。 | |
H | 僕はみなさんから、ひとりぼっちって感覚をあまくみすぎてるような印象をうけます。 僕がもしそのことを突き詰めて考えたら気い狂うと思う。それをごまかすような感情として「愛」みたいなもんがあるんやと思う。 恋愛感情なんかとは全く別な、自分の境界をあいまいにするようなもんとしてですね。誤解してるかもしれませんが、 いろんな人と一生恋愛し続けるってのは、地球を巨大なカラオケボックスにしたような話だと思うんです。 新鮮さや刺激ってのを、半永久的に死ぬまで繰り返すことで孤独を克服する、逃げ切る。 カラオケにはカラオケの魅力があるからその方法もアリやと思うけど、僕はあまり真剣になれない。いわゆる結婚って すごくやり玉にあがってますけど、そこには制度の古くささだけでなしに、他人と長い時間を共有する文化って側面もあった。 そこんとこには興味というか、可能性を感じます。 | |
K | 林道義氏が「フェミニズムの害毒」って本を出されてます。 僕自身はあまり賛成しかねるとこなんですが、その中では伊田さんなんかも攻撃されてるわけです。 「家族」ってことがやり玉にあがると、家族なんかバラバラにしてしまえというふうにみているのか、との批判がよくなされます。 でも基本的な親と子、男と女って関係のかたちが無くなってしまうことはないだろうし、 フェミニズムやシングル単位論の家族批判も、家族そのものへの批判というよりも、そのあり方、 関わり方を変えるための批判であるととらえているのですが。 | |
伊田 | 気持ちはわかるし、そうなんです。単純に家族はつぶせ、バラバラになれなんてぜんぜん言ってなくて、 どういう楽しい関係をつくれるかなってことです。僕は家族以外の人にも親しい、気持ちいい関係はもてると思う。 それを家族だけに固定してしまうことの変な感じ、「家族を大事にする、じゃあ家族以外は大事でないんか」、 という突きつけを自分にも社会にもしたいというのがあります。それとさっきの浜村さんのん、微妙な問題あるんちゃうかなと 思うんですけど。みんなもなんとなくわかったような気がしてて。孤独ってことを見つめたらめっちゃキツイでと、 だけど僕は本なんかで見つめなしゃーないやろってことは言ってるんですよ。孤独やで、そう言う意味ではみんなひとりやでと。 結婚してもだれか好きな人ができても、孤独ゆうことを忘れたら抑圧や甘えになるでと。だからまずは孤独をみつめようと。 それはどうなん。見つめんとこって言ってたん。 | |
H | 見てしもた。で、これはヤバイなと。そっからごまかしが始まったって感じでしょうか。 | |
伊田 | 誰が? | |
H | 僕です(笑)。 | |
伊田 | 僕も学生の頃とか彼女とね、これはもうずっといけると、 すごい二人はうまくいくと思てたんが壊れたあたりの体験が大きくて、つまり、一回は見た感じがしたわけ。 あーこりゃキツイと。そっから見んようにすんのと、それがあると分かったってのはちょっとちゃうような気がするんやけど。 | |
H | 「孤独」って単語は同じなんですけど、なんか違うんかもしれない。 僕の感じてる孤独は小さい頃に夜ひとりで眠るときの体験なんかからはじまってて、なんでゼロとちゃうの、とか 今まばたきした瞬間にすべてが終わってしまうような不安が根にあるようなヤツです。 そんでそいつを忘れられてる時ってのが昼間であり、人といるときだったんですわ。 夜一人でいると、今でも気持ちワルイ感じがすることがあって、ヤバイのかも知れなない。 | |
質問者4 | それをどうごまかしてはるの? | |
H | そんな夜はもう寝てしまうしかないでしょうけど、普段は人によく会うっちゅうことかなあ。 一人でおったら、自分が自分のことについて考えてて、なんかめっちゃ自分でしょ。でも人がいて、しゃべっててってときは、なんか自分を忘れてるでしょ。 | |
質問者4 | それって音楽聴いてるときもあるし、TVでドラマみてるようなときにもありますよね。私なんか竹ノ内豊みてて我忘れてますもん(笑)。でもそれをごまかしなんて思わなくてもいいんちゃうの。 | |
H | ええ、はい、おっしゃる通りなんですが、やっぱり僕なりの表現としてはごまかしなんですね。その方法がおおざっぱに2種類あって、刺激を繰り返すことで自分を小刻みに消し続けるってのと、長い時間のなかで自分って単位そのものをなくしていくってのがあるということだと思うんです。 | |
質問者4 | そんなんどっちもしたらいいやん。永遠にこの人といけると思ってもいいし、失敗して絶望もしたらいいやん。ほんで恋愛繰り返してってもいい。私も一通りしてきましたが、そのあげく私は今ひとりがまったく平気になって、どっちかったら一人じゃないとイヤだって感じもあるぐらいです。 | |
H | 達人の域だ(笑)。 | |
質問者4 | 年の功です。あと恋愛をカラオケにたとえるのも、人間ってそんなに一面的なもんじゃないでしょう。 | |
H | そもそも僕は恋愛ってのに、特別な価値をおいてないですから。 | |
質問者4 | それならひとりの人とずっといくってのは幻想じゃないんですか。 | |
浜村 | 幻想でしょう。ただ価値の問題は別です。その僕の幻想の元になってるのは親子関係でして。 僕のいろんな関係のなかでもやっぱり親への感じって特別なもんがあります。あんまり自分がいない感じがします。 じゃあその特別はなにかって考えたとき、血とかそんなんじゃなくて、やっぱり時間の長さなんですね。 長くうちにいた犬にももちましたから。 そんな感じを肉親とかだけじゃなしに、他人とももてるってことを証明したい気持ちがあります。 | |
質問者4 | 自分以外の人間で自分にとっての特別な存在って幻想を拭いきれない部分ってのは、 まだ私の頭の片隅にもありますが、そのことばかり考えて今をないがしろにしてしまうというのはちょっと。 | |
伊田 | それはやっぱ、結果続いたっていうのと最初から続けるというのは別でね。 彼が深い関係をやってみたいと思うのはいいねん。で、も相手が離れることを止めることはできへんねんな。 ほんで結果、深なるかどーかってのは「時間」だけやないわな。30年たっても浅いもんはは浅いやろし。 | |
H | うーん。僕はそこに真理みたいなもんがあるように思うのですが・・・・。 あっそうや、Yさんにききたい。僕は山崎さんと知り合ってまだ数年にしかならないんですが、 例えば僕が事故でくたばったとして、山崎さんちのねこちゃんが死んでしまったとします。 そのときの悲しみを比べたら、やっぱりねこちゃんの悲しみの方が深いと思うんですよ。 | |
Y | それは言えるかも(笑)。 | |
H | ほらっ、ここに真理があったやん(笑)。 | |
Y | ひよちゃんていう猫はエイズキャリアなんです。いつ死ぬかもしれないって状況があるんですよね。 浜村さんはまぁくたばらへんやろって思ってるからね。 だからひよちゃんは特別っていうのもあって、彼女と浜村さんとは比べるのはしんどいかな。 でも浜村さんが死んだら、その日はもう、ひよちゃんを忘れて浜村さんのことを考えて泣きますよ。 | |
H | ありがとうございます(笑)。 | |
伊田 | 自分が死んだとき、いろんな人に悲しんでほしい? | |
H | 死んでもた・・・・分かんないっす。 | |
伊田 | それなりに悲しんでもらったらええんちゃうかな(笑)。 森島さんやらが僕のことおもってくれたら、僕はそれで嬉しい。どうでもええって人もいて、なにもみんなから悲しんでもらわなくったっていいと思うし。だけど別にひとりの人にだけって必要もないような気がしますね。 | |
M | 話がいろいろ出て、もう終わりなのはもったいない感じです。 またいろいろ聞いてみたいなと思いました。孤独ということに関しては、私は落ち込んだ時にひとりでこもるタイプなので、 どちらかと言えばいろんな人がいる中で感じるひとりぼっちの方がキツイなあと思いました。 それから私がした話の中での関係って、恋愛として好きな人との間柄だけをさしているのではなくて、 なかにはどきどきするような人もいるかもしれないけど、だからその人が特別ってわけじゃないんです。 自分の回りにいるいろんな大事な人の中で、この人はどきどきする大事な人ぐらいの感じでしょうか。 | |
伊田 | どきどきしないけど大事な人もいる。 | |
M | いる。今はそっちの方が。どきどきする人ってあんまりいてないからなあ(笑)。でも大事な人はたくさんいます。別に血縁があるわけでもないし、職場が一緒だったわけでもないのですが、どういうわけかめぐり合って自分のささえになっている人達、自分のからっぽな部分をうめてくれた人達がたくさんいる。そういう人達との関係を今後も大事にしていきたいと思う。ただ特別な人というか、恋愛感情のおこるような人なんかに限定した話じゃないんですね。それから結婚については、さっき言われたフランスの制度のようなことは、日本でも将来そうなるのかもしれないけども、私は好きな人とあまり一緒に暮らしたくないという思いがありまして。住みたいと思うような人も出てくるかもしれないけどね。私は法律婚はしたくないし、結婚式とかもしたいと思わない。「この人が私の特別な人です」なんてのも言いそうにありませんし。いまいち定義も分からないのですが、結婚っていうのは自分とその人との関係を世間に公表することぐらいにしか思ってないんです。だから、そうしたことにわざわざエネルギー使う必要もないと思うし、いつその人とうまくいかなくなるかも分からないのだから、言いたくもないですね。とりあえず今好きな人で一緒に住んでる人です、とか好きな人がこの人です、ぐらいのことは自分の回りの人達には言うかもしれないけども。それぐらいのこととしか考えてないので、税金やお金の面なんかで優遇されるのは基本的には変やなと思っています。あと、労働運動のことですけど、私自身組合にはいってますし、今後辞める気もさらさらなくて、私はだいぶ組合にたすけられて仕事をしてきていると思っています。それは直接的にたすけられたことだけでなくて、精神的に支えられてるってとこもあります。そやけどここ何十年間かの労働運動のあり方に、今の自分にとってピッタリこないところがたくさんあるということも感じています。でも私は女性解放運動もそうやし、ある種合わないところもあるけど労働運動もそう、やっぱりあの人達の運動が自分の今生活している基盤をつくってくれたんだと思っていて、私はそれにはいつも感謝しています。組合辞めるってことはしていきたくないし、そのなかでよりよい運動になるために、私はシングル単位のことなんかを時々言ってます。また今後も言い続けていくんじゃないかなと思っています。あと、先生という仕事をしていて感じるのは、心の交流っていうか、魂のレベルでのつながりを感じられるようなことが、お金よりも人を幸せにすることだと思うのですが、そういうことを感じられるような機会が今の子供達にも少ないということです。具体的にどんな方法をとっていくのか分からないけれども、そういうふうなことにちょっとでも携わっていけたらいいなと思います。そして自分の生活や暮らしの中でそういうつながりのあるものを大事にしていきたいです。それとまあ、気持ちのいいことがやっぱり残っていくと思うので、しんどいけど最終的にラク、ラクというか気持ちが枠でがちがちに固められるんじゃなくて自分の枠を外していって人とうまくつながっていけるというようなこと、そうになるまでにしんどいこともあるかもしれないけども、私はそういうものが残っていって欲しいし、残っていくようにしていきたいなと思います。 | |
Y | ひとりひとりが尊重される社会になっていくのが理想です。最低限度その人が生きていけるだけの社会保障があって、いろんな生き方が反映されるような制度がつくられたら良いなと考えます。私たちが小さな声をあげていくことによって、少しづつ変えていけると思うんです。今日集まってくださったみなさん本当にありがとうございました。またいつかこのような集まりをもちたいと思います。 |
テイプおこし担当:Y、H