1995年度 ベスト

 

『映画イヤーブック1996』
「オリジナル・ビデオ・ムービー」担当、中村勝則が1995年度OVの大まかな流れを解説

 

ザ・ニュー・リリース』誌 「1995年度 ビデオオリジナル・ベストテン」
@『痴漢日記・尻を撫でまわしつづけた男』 (未見) 中村勝則も絶賛                       
A『闘牌伝アカギ』                       原作漫画:福本伸行(のぶゆき) エグゼクティヴ・プロデューサー:飯田嬢ニ(いいだじょうじ) 監督:舞原賢三 脚本:田辺満
出演:柏原崇(かしわばらたかし)、松重豊(まつしげゆたか)、小木茂光(おぎしげみつ)、大高洋夫、吹越(ふきこし)満、尾藤(びとう)イサオ、寺田農(みのり)
B『企業戦死YAMAZAKI』 (未見)
C『お天気お姉さん』 (未見)
D『警告!のぞきアリ』 監督:下山天 脚本:こがねみどり
出演:愛禾(あいか)みさ、梶原聡、余貴美子、哀川翔
E『夏の思い出』 (未見)
F『大災難』 (未見)
G『淫らな関係・インモラル』 (未見)
H『XX(ダブルエックス)・美しき獣』 (未見)
I『君といつまでも』  (未見)

 

 さらに私の好きなのを追加。

『チンピラ仁義 極楽とんぼ 2』 
監督:小平裕 原作:西川つかさ、井上正治、脚本:西川つかさ 
出演:哀川翔、林泰文、森下桂、川島なおみ、石橋蓮司

 

 

            私、1999年末に、漫画喫茶で置いてあった雑誌『COMNAVI(コムナヴィ)』(1999年2月発行)の特集「1998年度の漫画ベスト100」をチェックしてみたのね。で、3位に福本伸行の漫画『カイジ』が紹介されていて、こんなダメな絵の漫画が〜?って不思議やったけど、3位になるぐらいやからって試しにチェックしたらあまりのスリルに夢中になったのね(ただ私は、主人公カイジには恋しなかったけど。筆者は、主人公を男性読者が共感しやすいように描いてはるのね)。
 で、それから『アカギ』も「ベスト100」に入っていたので、麻雀ものか〜麻雀全然知らんのにって困ったけど一応それもチェックしら、主役の13歳の魔性の少年、赤木しげるのかっこよさにメロメロ。麻雀が分からなくっても赤木しげるの魅力で読ませますよ。あまりにも超人すぎて、読者が親近感感じるようなのではないけどね。そして他の『天』『銀と金』へとたどっていった。

 福本伸行は、元々が絵が下手やし、そんな人気もなくしょぼかったのね。それが、麻雀漫画誌『近代麻雀』からさらに発展した『別冊近代麻雀』『近代麻雀ゴールド』って辺境なところでの『天』(第1巻が1989〜)、『アカギ』(第1巻が1992〜)で成功(作者も「第二のデヴューだ」って)。そして一般的なメジャー誌『ヤング・マガジン』で麻雀ネタではない『カイジ』(第1巻が1996〜)を大成功させ一躍メジャーになったのね。そのおかげで過去のしょぼかった頃の作品もたくさん復刻され、漫画喫茶にもたくさん置かれているよ。
 麻雀漫画の『アカギ』も、私は麻雀全然やけど、それでもキャラクターの魅力や、スタイリッシュさで楽しませるよ。
 元々、赤木しげるって、『天』の主役・ゴツイ顔したオッサン天の恐ろしい対戦相手、裏麻雀界の伝説的偉人(じいさん)として登場し、後に天の心強い味方となり、主役をすっかり食ってしまったのね。で、赤木しげるがあまりにも魅力的すぎたのでしょう、彼の若い頃を題材に昭和30年代を舞台設定に(私の生まれたのが昭和38年ね)『アカギ』って別シリーズが企画された。彼いくらなんでも超人すぎるわ。それも未だほんの13歳ってのにすごすぎ! 悪魔であり、天使であり。ギャンブル狂でありながら、それに全生命をかけるところが純粋って。あまりも魅力的すぎ。描かれるのは、彼の神話と伝説。
 絵がひどすぎるけど、それでも私には絶世の美男。やっぱり、女性読者が登場人物を美男って感じるかどうかは、絵じゃなくって物語なんや。足りない絵の描写は、私の空想が埋めるのよ。

 OV化されていたのを知って、さっそくチェック。ジャケットを見ると、アカギ役の柏原崇が美しくズキッ!
 あるしょぼい男が、ヤクザとの麻雀勝負をして負けたら保険金かけられて殺されてしまうのに、もう後がないって状況で「助かるなら、悪魔とでも手を結ぶ!」って祈ったときに、落雷がして、ずぶ濡れの真っ白なシャツを着た端正な美少年が登場。天使のような悪魔って古典的な。女の子みたいにキャシャで端正な美貌と真っ白なシャツとで、天使のような非現実的なのを表現し、ギトギトの油っこいオヤジ世界に登場して、極端な違和感を感じさせた。そうすることでいきなりヤクザたちと麻雀勝負し、勝ってしまうってとんでもない設定でもファンタジーとして観させてしまう。彼に白々しいほどライトを当てまくって、さらに麻雀卓からの反射で彼に光りを当て、彼の「他の連中とは違う純白な感じ」を表現していた。

 TVのゴールデン・タイムのドラマにも出ているけど、日常を舞台設定にしたのでは、彼はあまりにも女の子のようにキレイすぎて、リアリティをなくして浮いてしまってしてしまう(例えば『将太の寿司』は原作漫画では読者が親しみやすい庶民的なキャラクターなのに、彼は顔キレイすぎてミスキャストやったな)。使い道がないのか、だから眼鏡をかけてあえて地味にして、ドラマから浮かないようにしているような・・・。 

 観ると、意外な広いもの! ヤクザ連中がアカギ少年にはかなわないと悟ったら、急遽依頼したプロの代役を演じた松重豊の凄みのある美男ぶりにもズキズキ。初めて知った。彼のこと、誰か情報ちょうだ〜い。実際、柏原崇史って演技がそんなうまくないから、凄みと格の表現では、松重豊が見事すぎて、彼に比べたら、原作のアカギの超人ぶりと凄みと狂気の表現力は柏原崇には無理やったかな(原作ファンからしたら少し物足りないかもね)。特に柏原崇少年が、松重豊に「負けると指を切ってもらうことにするぜ」って脅されても、全然おじけず言い返すとことか、全然力量不足やなと感じた。松重豊が見事すぎて、なんで彼があんなのに負けるの〜?って疑問感じてしまいましたが。

 まあ、原作のアカギの「天才ぶり」「凄み」「狂気」「怪物」「でも無欲で純粋」の表現って、ものすごい難しい思うけどね。
 下手にヤンキー上がりの芸能人が「凄み」なんてやったら、いっきに陳腐なってしまうしね(ギョロリと目をむいてドスをきかせるみたいな)。日本の不良の凄み方とか、もう悪い意味で伝統芸能みたいで陳腐になっているでしょ。
 だから製作側は、きれいすぎてリアリティのない白百合のような美少年にこの役をやらせファンタジーとして見せようって解釈したのでしょうね。可憐な一輪の白い花みたいな美少年が、悪魔みたいで、いいわ〜。

 松重豊が、プロの代打ち麻雀師として自信マンマンでかっこよく登場したのに、最後少年にやられてボロボロになっていくときのあまりにもミジメな苦悶の姿がもうたまりません(脇でオロオロしている組長役の小木茂光もいい)。

 このOVって、スタイリッシュに美男達をなめまわしているのね。いいわ〜。お薦め。

 やっぱり、エグゼクティヴ・プロデューサーの飯田嬢ニが、『ナイト・ヘッド』(武田慎治、豊川悦司)に続いて、オコゲを狙ったか?
 『ナイトヘッド』の大ヒットの本当の理由は、オコゲが大喜びしたからやし。美男兄弟の近親相関的な恋愛を妄想させるように作ってあるしね。
 彼のHPの日記によると、彼には5歳になる息子がいるらしいから、結婚して奥さんいてるってことで、異性愛者でしょうね。やっぱり、オコゲ市場を確信犯的に狙った戦略か? それとも偽装結婚で、実はゲイで、美男にドキドキしながら撮っているのかな? まあ、『ナイトヘッド』観ると、若い女の子ばっかり出てくるからロリコンっぽいけど、でも女の趣味よくないのでは?(タヌキみたいな顔したのばっかり)

 なんでそういうかと言ったら、同じ福本伸行の『銀と金』が結構面白かったのに(主役二人がごつくてイマイチ私の好みのルックスではないけど)、OV化されているのをとりあえずチェックしてみたけど(1993年〜4年にかけて全5巻と、それに別シリーズでもう2巻)、もう全然ダメ。
 インテリヤクザものなんやけど、痛快活劇を撮る能力が監督にも脚本家にもないみたい。低予算早撮りとか安い俳優しか使えないとか過酷な条件だったのかもしれないけどね。
 私が一番不満なのは、原作の男同士の官能的な関係が、も全然。ジャケットを見ただけで、主役のインテリヤクザ中年・銀の役を演じた中条きよしが銀色のかつらをかぶっただけでメチャクチャ変やし、相棒役の男の子・森田を演じた豊原功捕(こうすけ)もも一つさえない感じ(黒沢清監督『ヤクザ・タクシー』ではズキっときたけど)。
 私、原作では、連続殺人鬼のかわいい男の子を監禁する話しが一番好き(リビドーにくるの)なんだけど、OVでは大川興業の江頭(えがしら)みたいでイヤ〜ン。彼を監禁する男たちもひどすぎ。たぶん、その監督さんには全然その気がないのでしょうね。他にも、賭けポーカーでインチキをするお金持ちの不良息子も結構好きなキャラクターやのに、このOVでは全然。少年隊のニシキを腐らせたようなの。賭けに勝った主役が、不良息子に対して「その他人を見下した態度、嫌いじゃなかった」って言うとこ、全然いきていないよ。

 原作では、相棒のごつい顔した若い男・森田が悪の世界から引退して、そして新シリーズで、又、銀が別の若い男の子を勧誘するんやけど、その男の子が、原作では読者が親しみやすそうな感じのかわいい男の子なんやけど、OVでは金子賢。不良っぽい(ガラの悪そうな)ハンサム。北野武監督『キッズ・リターン』でヤクザの世界に入るほうの男の子の役を演じたの。ボクシング界に進む線の細い感じの美少年、安藤政信が結構私の好みやけど、繊細そうな男の子とは別に、金子賢のワイルドな(ガラ悪い)男の子がいるんもコントラストが効いていていいよね。私、オコゲやから、そういうのって結構好き。

 追記・本屋で、『カイジ』をチェックしてみたら、帯に「別冊宝島『このマンガがえらい』(1996年発行)で1位に」ってあったのを見つけた。その本を図書館で取り寄せたら、福本伸行『カイジ』が第一位に選ばれ、作者インタヴューがおこなわれていた。ぜひチェックしてみて! 眼鏡をかけた、真面目そうな感じの人よ。発言もすごく道徳的なのよ。これは1996年に発行された漫画からいいのを選ばれていた。主な分類は、青年漫画誌か、少年誌か、少女漫画誌か、レディース誌かってね。
 同様に、別冊宝島『このマンガがすごい』(1996年発行)でも福本伸行が絶賛されまくっていました(「絵がひどすぎて、最初は食わず嫌いだった」ってなこと書かれてはいましたけどね笑)。こちらでは、これでに発表された漫画全てを、スポーツものか(それをさらに野球ものか、格闘技ものかって分類して)、ギャンブルものか、コメディか、恋愛ものかって。当然古い作品は初出年が書いてあって、絶版とかもあるのね。