1999年12月3日、リプロ・ヘルス情報センター、菅睦雄様からお返事のメイルが届きました。

菅睦雄様に出したメールには私の本名をなのっていましたし、先生からのお返事の宛名も私の本名でしたが、ここではハンドルネームに変更しておきました。

        のら猫の手 様 

 メールをお送り戴きありがとうございました。

 早速、のら猫の手さんのHPも拝見させていただきました。実に素晴らしく詳しく調べ上げられ、よく纏め上げられたものですね。敬服しております。

 お問い合わせ戴きました件につきましてですが、「第三世代のピル、血栓症のリスクが第二世代ピルに比べ、2倍!」というイギリスで起きた問題のことですよね。

>>「ノルウェーでは、95年に高濃度ピルの販売が禁止されていますし」

とありますが、禁止されているのではなく、リスクがあるからという制約がつけられているのです。まもなく、その制約も解かれるというのは聞いておりますが、まだ解かれていないようです。世界の中でノルウェーだけのようです。

 この問題は、ピルそのものの問題ではなく、些か場違いなところで論議を呼んだものと考えております。第二世代ピルの問題を改善してできたのが、第三世代ピルであり、世界中の多くの国で、多くの医師の手で処方され、多くの女性が服用している事実があります。この問題につきましては、私のHPで述べてますとおりです。

 でも、なぜ、こうも多くの人たちが、ピルのことについて反対するのでしょう?
 そもそも、ピルというのは、女性が自ら望まない妊娠を避けるために飲むものであって、誰もその自由を拘束するものではないと考えます。しかも、確実性が高く、月経痛や不順などという月経にまつわる様々なことを解消してくれるという、女性にとって好都合な効用をもたらしてくれる生活改善薬的な存在であると思っているのですが、不思議でなりません。

 私も、平田医師、武田医師、吉田女史、森女史らの集会に参加し、発言したこともあります。些か怖かったです。何事も、私たちの意見が正しいとして、他の言葉には、耳を傾けようとはしない点…。武田医師に、「あなたの避妊法は何」と聞きましたところ、コンドームと答えてくれました。コンドームで避妊できない人はどうすれば…。コンドームをしっかりとつけるように指導すること…。こんなやり取りでは、埒はあきません。最後には、環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)とピルとを混同してしまうありさま、話が噛合う訳がありません。

 ピルを使う使わないは、確実に望まない妊娠を避けたいと願う女性であって、なにも、男性が決めるものではないはずですし、他の女性が咎めるものではないはずです。ピルを飲んでる女性も、本当にピルは副作用がなく、安全なのだろうかと不安を感じている多くの女性もいます。セックスには相手が必ずいるのです。その相手がしっかりと協力してくれれば問題ないはずです。

 フランスでは「ピルほど人生を大きく変えたものはない」と7割近くの女性が答えているほどです。

 私は、総ての女性に「ピルを手にしよう」と語りかけるつもりは全くありません。ピルをとおして女性の性を考えていければよいと考えます。ピルそのものよりも、性に対してもっとおおらかでありたいと考えます。

 ピル発売から、3ヶ月が過ぎました。
 そこで思ったことを「凍てつくピル市場」と題しまして、綴ったものがあります。参考にテキストファイルで添付致します。ご批判戴ければありがたいと思っております。

 なにか脈絡のないものとなり、ご期待に答えていないと思いますが、宜しくお願い申し上げます。

リプロ・ヘルス情報センター
菅  睦 雄
(BZH17611@nifty.ne.jp)

     

 

 「リプロ・ヘルス情報センター」のホウムペイジ のメッセージボードにも、先生からの返事が読めますので、チェックしてみたい方はチェックしてくださいね。 

 その後、菅睦雄先生にお礼のメイル(ついでに菅睦雄先生の「凍てつくピル市場」への愛のムチも)を送ったら、12月5日に又もや懇切丁寧なお返事が。

 それとご本名をイニシャルのSAに変更しました。

      のら猫の手 様

 早速のコメントありがとうございます。

 ご指摘戴きました点、なるほどとうなずけます感が大いに致します。もともとの「凍てつくピル市場」の発想が、全国助産婦学校や看護学校に対しますピル啓発活動を行っては、如何なものでしょうかという提案書から入っておりましたので、今読み直してみますと、論点がいまいち一般的ではないようですね。もう少し論点を明確にしていきたいと考えます。ありがとうございました。

 前回のメールでは、「SAからの手紙」を呼んでなかったものですから、少々ピンとのずれたコメントになっていて申し訳ありませんでした。

 その手紙の中での誤解を以下に指摘したいと思います。

 高容量・低容量と高濃度・低濃度のことについて触れているようですが、まず、ピルに含まれるホルモン量の違いは確かに理解できます。また、ここでいう容量という言葉は、受け入れる量ではなく、用いる量なので用量という言葉が正しいことになります。高濃度という言葉も、少々不自然な言葉かとも思われます。

>>製薬会社としては、「より強力な効き目」を製品に求めるため、最近のピル
>>は、低用量・高濃度ピルとなっています。そして、用量が低くとも濃度が高
>>ければ、高用量ピルと同じような副作用が出るのは当然なのです。

とありますが、治療薬の開発の場合ならうなずけるところもあるでしょうが、ピルの場合は、発想がまったく異なります。ピルの50年の歩みでも述べておりますように、副作用との壮絶な戦いをしてきたともいえ、安全性の追求に焦点が絞られているのです。この50年の間にピルの副作用はかなり軽減されてきております。全くないとはいえません。したがって医師の処方のもとでの指示薬になっているのです。…(開発経緯の違い)

 したがって、ピル中止後の妊孕性につきましても、膨大な資料があります。当然、子どもに対する影響も調べております。自然発生率とに差はないとあります。また、10年前に臨床試験が行われ、その臨床成績で承認されたことは、事実ではありますが、その間、日本では使用されなかったのであり、広く世界では使用され続けております。…(枚挙の暇ない蓄積された資料)イギリス・ドイツの件は省略します。

 10%が体内に長く残るとありますが、1-3%が10年から20年前の頃でのデータを読んだ記憶があります。当時で追跡不能、極微量のためと、はっきりは記憶にないのですが…。(申し訳ありません。)現在のところ、ピルに含まれるホルモンは、体内で分泌されるホルモンと同じステロイド骨格を持ったもので作られております。したがって、基本的に総てが代謝・排泄されるのです。また、ホルモンの作用は、細胞内でレセプターを介して発揮しますので、ステロイド骨格を持たないホルモン作用を発揮する、「内分泌かく乱化学物質」とは、質を全く異にします。…(ホルモン作用の理解)

 「5,000人のボランティア女性によって7万周期以上にも及ぶ臨床試験を終えて」というフレーズは、私もよく使う言葉です。一人の女性が、平均14周期服用した臨床成績であることが理解できます。5000人の多寡を言うつもりはありませんが、同じ医薬品で健康な女性が、全く健康に問題なく14周期も休むことなく飲み続けられたという事実です。治験薬のもつ素晴らしさに、私はむしろ感動を思えているのですが…。…(感動の臨床試験)

 試験期間は、決して3ヶ月ではありませんし、あらゆる角度から解析されたデータだと思っております。またその結果は、学術専門誌に掲載されております。

 大きな誤解としまして気の付きました点を述べさせていただきました。専門的にならずに、少々言い回しを変えてみました。何か、ご不審な点やお気づきの点があれば、お申し付けください。再度、説明を致したいと考えております。

 ピルに対します正しい情報の伝達に細心の注意を払い、よりよい方向へのリプロ・ヘルスを求めまして…!

 ありがとうございました。貴重な情報をお送り戴きまして…。

リプロ・ヘルス情報センター
菅  睦 雄
(BZH17611@nifty.ne.jp)

     

 ほんとうにありがとうございました。